これからの教育を考える|Most Likely to Succeed

これからの教育を考える|Most Likely to Succeed
スポンサーリンク

異色の学校:High Tech High

映画『Most Likely to Succeed 』

先日、『Most Likely to Succeed 』 というドキュメンタリー映画を見てきました。

一般に公開されている映画ではないのですが、アメリカのカリフォルニア州にある公立高校を舞台に、生徒達の成長を描いたドキュメンタリーです。

「人工知能 (AI) やロボットが生活に浸透していく21世紀の子ども達にとって必要な教育とはどのようなものか?」というテーマに、「学校は創造性を殺しているのか?」TEDトークで有名なケン・ロビンソン氏などの有識者や多くの学校取材を2年間積み重ね制作されたものです。

『Most Likely to Succeed』の予告編動画

何が異色なのか?

舞台となるのは、アメリカ・カリフォルニア州にあるHigh Tech Highというチャータースクール*。

その公立高校には、教科書はなく、時間割もない。決まった教室もなく、チャイムもならないような学校です。
学期末の家族も訪れる発表展示会に向け、一つのテーマに沿った作品を、生徒たち自身が考え、作り出していくのが唯一の授業です。

何をゴールとするか、誰とやるか、どう表現するか、どう実現するか、そのために何が必要かなど、全てを自ら考え、作り出していく必要がある大規模なプロジェクトです。

子供たちは自ら定めたゴールに向かって、必要な情報を集め、最終的な表現方法を決め、それに必要な知識(例えば、歴史や物理、化学、数学、芸術等々)を自ら学び、最終成果物を作り出していってました。

High Tech Highの公式なサイトは下記です。
https://www.hightechhigh.org/

*チャータースクールというのは、特別認可(チャーター)を受けて開校される公立学校。公立学校であるため、生徒数に応じた運営資金が州から支給される一方、教育成果に対する責任を負い、もし成果が出せない場合はチャーターが取り消されるというしくみになっている。

教育の在り方に対するジレンマ

アメリカと日本の教育の共通点

映画を観て、個人的に驚いたのは、アメリカにおいても、日本と同様に、受験偏重型教育が、問題視されていた点です。

この時代に次々と新たなサービスを生み出しているアメリカは進んでいるものと思い込んでましたが、基本的な教育に関する悩みは同じようです。

現在の教育の在り方でいいのか?

学校教育の中では、判断する訓練をしていないのに、社会人になった途端に自ら判断しろと投げ出されるのが現状だ。という話は印象的でした。

日本でも、大学までは、答えがあるものをいかに早く、いかに正確に答えられるかを求められ、社会に出ると、得た情報を読み解き、どう判断していくかが求められます。学んできたことと必要とされることにギャップが存在している状態です。

小さな頃は、好奇心の赴くままに自由な発想をしてこれたのに、大きくなるにつれて、標準的な枠の中で、決まった正解を導き出すことが求められる構造になっているのが現状です。
その枠組みから外れるとなかなか認められず、本当は大事な創造性や好奇心が開放できない構造です。

本当に今の教育を放棄していいのか?

一方で、他校の生徒のインタビューと、親御さんとHigh Tech Highの先生との面談が、対照的で印象的でした。

高校で学ぶ理由を聞かれた生徒は、「いい大学にいくため。面白かったり奇抜な授業はいらない。大学に受かるための勉強を教えてほしい。社会に出てから必要になるようなことは、大学に受かってから、考えればいいと思う。」という回答でした。

スポンサーリンク

また、High Tech Highの生徒の親御さんの先生への質問は、「教科書を使った勉強は少しもやらなくて大丈夫なのか?プロジェクトベースで特定分野について、やる気を出して勉強し、身に着けているのはわかっている。だけど、大学入試に必要な教科を全般的に勉強しなくて、本当に大学に入れるのか?」というような内容でした。

これから必要になるだろう新しい教育と、構造として残り続ける今の教育の狭間の葛藤を映し出しているように思います。

どういう教育の場がいいのか?

生徒たちが得たもの

Most Likely to Succeedの映画の2人の高校生は、何度も挫折を味わいながら、新たな自分を見つけたり、仲間と協調していく難しさ・大切さを、身をもって経験し、本当に成長しているように見えました。

教科書のない、完全プロジェクト型の教育がHigh Tech Highでは行われています。この個人の好奇心を見つけ出し、それを思う存分育てていくような教育がこれからの社会を生き抜く力になると思います。

ただ、それを通じて、どういう人間に成長できるのか、将来にどうつながるのかについては明確に答えられないのも現実です。
Most Likely to Succeedの映画の中でも、取り組みはまだまだ始まったばかりで、成果は図れないと言っていました。

正解はわからない

我が家でも、子供の教育について議論してみました。

正解のない社会で生きていく子供に、正解のある問いを早く正 解くための勉強を、小さな頃からせっせとやらせたいとは思いません。
子供自身が、興味をもって、楽しいと思えるゴールや夢を見つけ、その実現に向け、懸命に生きてくれればいいと思ってます。
一方で、映画の親御さんではないですが、ある程度の大学は行っておいた方がいいかなという気持ちもあります。

正直、結論は出せませんでした。

まだ子供が小さい今は、できる限り子供の好奇心を刺激するような機会を、思う存分提供しようということになりました。

多くの親・教育者が考えるべき問題

変化が激しく、正解がない社会になりつつある今、子供への教育の在り方を、多くの大人が考え、行動していく時代なのではないかと思います。特に最も身近な教育者である親である我々が。

この「Most Likely to Succeed」というドキュメンタリー映画は、子供への教育という課題を自分事として考え、議論するとても良い機会になります。

是非機会があれば、より多くの方に見て頂き、少しでも子供の教育を考えるきっかけになればと思ってます。

Most Likely to Succeedの上映予定

いくつかの団体さんが定期的に上映を行っているので、是非探して観に行って頂ければと思います。

僕は、東京インターハイスクールさんが開催された上映会に参加させていただきました。上映後に、参加者でディスカッションもでき、有意義な時間となりました。学校の先生やお子さんをお持ちのお子さんなど幅広くいらっしゃってました。

また、FutureEdu Tokyoさんのサイトから、各地の上映予定が確認できます。その他情報も満載なので、非常に参考になります。

また、Facebookのグループでも開催について紹介されているみたいです。
https://www.facebook.com/groups/mltsinjapan/

 

もし近くで開催される場合などあれば、是非足を運んでいただければと思います。